資金と収支・設備投資と採算性 【後編】

更に考えなければならないものに「税金」があります。税法では課税は売上を元に計算されます。
このA接骨院の場合には、現金残高(儲け)の60万円に対しての課税ではなく、経理上の「利益」960万円に対して課税されます。
従って、325万円の納税義務が発生します。
年間の経営経費の1440万円と納税額である325万円の合計1765万円が「現金」で必要となります。
こうなりますと年間1500万円の年間総入金がありましたが、差し引き265万円の現金不足が発生します。

結局、「帳簿上」では利益(黒字)があるのにもかかわらず、現金が不足しているという、「黒字倒産」状態となります。

昨今は請求代行会社などで療養費の全額立替払いをする方法で早期入金を可能にしているものがあります。手数料が高いと言われますが、経営ベースで見てみると例え10%の手数料を支払ったと仮定しても有利な方法です。
なぜならば、月間の経営経費は手数料を入れ135万円となりますが、施術後約1カ月後の入金となりますので年間の入金総額は2100万円となります。年間経営経費が1620万円になったとしても480万円の現金が残ります。

更にこの手数料は経費となりますので、年間の総利益は780万円となり、納税額は249万円と大きく軽減され、現金残が480万円ありますので、納税後も231万円の現金の内部留保が可能となります。
算出された経理上の利益はあくまで数字ですので消費する事は出来ませんが、儲けは現金ですから、自由に消費する事ができますので、有効に活用すれば、更に大きな節税につながります。

この様に、これからの接骨院経営においては、「儲けの出る仕組み」を開業前の基本構造として構築しておかなければ安定的な経営は期待できないでしょう。

◇   ◇   ◇

吉村 龍夫 氏
[ひーりんぐマガジン 4号より]

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