資金繰りをおろそかに考えるとおそろしい事態が待ち受けている?
独立して自分自身の院を開業しようとする全ての人は、治療家の顔以外にも経営者としての顔を持つことなる。経営者として直面するのがお金のやり繰り。これは法人、個人問わず、独立して事業を興す以上は避けて通ることはできない道といえる。
もちろん、治療家は会計のプロではないし、本業=治療こそが本分である。決算書や財務諸表の作成といった煩雑で難解な経理事務は外部の会計士に委託してもよい。しかし、少なくとも「今現在、自分の院のお金の状態、流れがどうなっているのか?」といった大局については自分自身で日頃から把握する習慣をつけておきたい。
どんなに施術の腕がよくても、患者が来て繁盛しているように見えても、資金が尽きてしまったらアウト。経営を継続できない。
そうならないためにも、資金繰りについて最低限の知識をつけ、常に先を予測した行動をとろう。
毎月の現金収支を監視すること保険請求分のお金の流れはつかみづらい?
もし開業前に潤沢な運転資金(現金)を用意できるなら、当然その後の資金繰りにとって大変有利となる。しかし、実績も担保もない段階で多額の借入れを行うのは実際には現実的ではない。
治療院経営の資金繰りに関しては、そもそも多くの治療家の間で認識違いが広がっている。根本的に、資金繰りという意味で治療院が他の業態と異なる点は一体何か? それは治療院ビジネスの基本は「保険を取り扱う」事業である点だ。
院には毎日大勢の患者が訪れ、治療を受け、お金が出入りする。まるで日銭(現金)商売の飲食店を切り盛りしているような錯覚に陥るが、実際は違う。現金の出入り以外に、保険診療によって生じる別のお金の出入りが発生していることを忘れてはならない。
この保険請求の金額の流れは大変見えにくく、複雑である上、額も大きい。しかも請求から入金までタイムラグが生じるため、余計に管理が甘くなりがちだ。
もちろんこれは院の形態にもよる。もし開業当初から「自費診療しか行わない」というなら話は別だ。日ごとのお金の流れをつかんでいさえすれば資金繰りが急速に悪化することもないだろう。
しかし、多くの院の診療メニューには何らかの割合で保険診療が組み込まれている。そしてもし、キャッシュフローの悪化を把握せずに時間が経過すれば、気づいた時は手遅れ…という事態にも。これは一般の企業で売掛金が回収されないまま黒字倒産してしまうケースと似ている。
具体的な方法としては、損益計算書(P/L)だけでなく、資金繰り計算書やキャッシュフロー計算書などを作成し、お金の動きを発生主義ベースでなく毎月の現金収支でウオッチすることが有効だ。
保険請求を介するお金の流れに気を配ること。保険入金が経営に与える影響を過小評価しないこと。資金ショートを生じさせないこと。これらは治療院経営健全化のための必須ポイントだ。
キャッシュフローの悪化を防ぐために請求団体による「早期現金化サービス」があるが、この「早期現金化サービス」の請求団体選定には十分気をつけなければならない。大きな落とし穴がある場合があるので選定は十分注意が必要だ。
※記事の詳細は、ひーりんぐマガジン55号(春号)をご覧ください。