さらに円をいびつにしていく
苦労して手作りした商圏地図ですが、これだけで商圏を知った気分になってはいけません。前ページで紹介した「いびつな形が長所」であることに着目して、この地図を実際の経営に役立てるために一工夫してみましょう。
円を角に作りましょう
丁寧に作られた手作り商圏は、ほとんどのケースで綺麗な円になることはないでしょう。ある部分は直線上に切れていたり、ある部分はジグザグになる事だと思います。ここでこの地図をさらに現実に近づけるために、円の線上の辺りを地図サイトで拡大して見てみましょう。丹念に見ていくと、大きな通りや線路、川やオフィス地帯が入っていませんか?
駅前などの繁華街では、線路の手前と向こうで人の流れは変わります。大通りの手前と向こうでも違いがあります。住宅街でも大通りや川などを挟むと、人の流れは変わるものです。
もし商圏の円の中に大通りや線路などがある場合は、それを意識的に記入すると良いでしょう。円の中心付近に大通りや線路がある場合は、通りのどちらか一方に患者さんが集中している事はよく見受けられる状態です。この場合は、少ない側に住む方にとっては、通いやすい距離にあるにもかかわらず、普段の生活圏内に含まれていないので、足が向かないとも言えるでしょう。こういった場合は、大通りによって遮断された向こう側を生活圏内としている人達がよく行く場所にポスターを貼るなどのプロモーションを行うことで、効果的に商圏内にプロモーションを行き届かせることが可能となります。
逆に円の端の方に大通りなどがある場合には、大通りなどより向こう側は患者さんもまばらである事がほとんどでしょう。この場合、この地域に対してプロモーションを行っても、実際の来院には繋がりづらいと考えられます。そう考えるならば、折り込み広告を配布する際などには、この地域を除外して配布してもらい、その分他の地域に回した方が効果的なプロモーションが行えるのです。
このように、手作り地図で商圏を把握する場合には、少し雑であろうと、「自らが絶対的に強い」と思われる商圏をバシッと線引きする方がわかりやすい地図となるのです。できるならば、商圏の境目となるこの線上は、全ての部分においてじっくりと精査し、どこまでを商圏とするかを熟考するようにしましょう。商圏地図の中で肝心要となる部分なのです。
近辺にある競合の場所に印を入れましょう
商圏内の競合把握も重要な項目です。自らが競合と思える院や店舗の場所に印を付けていきます。競合があるのかどうかわからない場合は、電話帳や当サイトの治療院検索を利用しましょう。
競合がある方面は点が薄くなっていませんか?点が薄くなっている場合は、患者さんが取られているというわけです。逆に影響が感じられない場合は、上手く患者さんの棲み分けがなされているので安心という事です。
患者さんが取られているケースでは、競合先の調査が必要になります。何故その地域の患者さんは競合に行っているのか?距離などの通いやすさ以外で取られている場合は、早急に対策を練ることが必要となるでしょう。
人が集まるポイントにマークを付ける
次に大きな商店や公共施設などの、人が多く集まる場所にマークを入れてみましょう。商圏の中に、どれだけ「人が止まるポイント」があるかを把握します。例えば比較的患者さんが密集している地域に大きな商店がある場合には、ポスターや置きチラシをお願いする候補地とすることができます。
「この場所とあの場所のどちらにポスターを貼った方が効果があるか?」という事は、専門の調査会社などにでもお願いしない限りは調べにくいものです。限られた広告宣伝費を有効に活用するためには、こうした人の集まる地域や人の流れが多いポイントを把握することが重要となります。
真空地帯を把握する
商圏を描いた場合、ほぼ確実に商圏内なのに点が存在しない地帯、というものがあることだと思われます。この真空地帯が何故あるのかを把握する必要があります。公園や森林などならばまだしも、住宅地ならば問題です。
住宅地ならば、まだ見ぬ競合店があったり、地域的理由(自院に向かう道が遠回りにしかない・昔競合があった等々)があるのかもしれません。この場合は実際にその地域に訪れてみて、実態を把握することで、今まで取りこぼしていた患者さんにアプローチすることができるかもしれません。
また真空地帯が大規模な工場や商業施設である場合には、その中でプロモーションを行う方法を考えるべきでしょう。ポスターを貼らせてもらう方法を考えたり、自由診療の場合ならば法人割引を設定して利用してもらいやすくするなども考えられます。
ひとまずの完成
こうして細かい修正などを加えていくことで、院独自の商圏マップが完成することになるのです。ここに詰まっている情報は経営に大いに役立つ貴重な情報ばかりです。院の強み弱み、存在を知られている地域から、全く知られていない地域までを知ることができます。この商圏地図から見て取れる事や、感じた内容などをどんどんとメモ書きしていきましょう。それによって、今後の経営を助けてくれる大切な道具となるのです。
そして商圏地図作りには終わりはありません。患者さんが入れ替われば、また分布も変わってくるでしょうし、現状の商圏地図を活用しきれたなら、さらに他のアプローチで地図を作り直してみてもいいでしょう。この地図での分析・活用法はまだ沢山あります。例えば、
・点の色を男女別や年齢別、来院頻度別などで変えてみる。
・アンケートなどを駆使して、「院を知ったきっかけ」別に点の色を分けてみる。
・患者さんが密集している地域に、どういった店舗や施設があるのか調べてみる。
・折り込みチラシ配布時に、一回の配布数を少なく、各地域ごとに日を分けて配布を行い、反応率と商圏地図を照らし合わせてみる。
等々、本当に様々な使い方ができるのです。若干面倒に感じる商圏地図作りですが、院経営の強力なアイテム作りとして、ぜひとも取り組んでみてください!