訪問マッサージの現状

対談 「訪問マッサージ 成功の秘訣」

 医療・介護・福祉の総合支援を行っているSELPFULJAPAN(セルプフルジャパン)合同会社の塚本洋介です。今回は鍼灸・あん摩マッサージ指圧師として横浜エリアを中心に患者さんとのコミュニケーションを大切にして、訪問マッサージを行っている秋間治療院代表秋間祥臣院長との対談です。
 秋間先生は訪問マッサージ歴10年、西洋医学と東洋医学を組み合わせた施術で患者さんの悩みに寄り添っています。訪問マッサージの魅力や事業成功の秘訣などをお聞きしました。

【塚本】今回は、新型コロナ禍でも成功している訪問マッサージの秋間治療院の秋間祥臣先生に対談をお願いしました。訪問マッサージを事業としている治療院や参入を考えている他業種の方に参考になるような事柄を根掘り葉掘り聞いていきたいと考えています。よろしくお願いします。

【秋間】よろしくお願いします。

【塚本】秋間先生との出逢いはビジネス交流会で知り合ったのがきっかけです。先生とはオンラインでずっと交流していました。実は直接お会いするのは今日が初めてで、先ほど名刺交換しました(笑)。
さて、まずは先生の生年月日と出身地を教えてください。

【秋間】1988年2月9日生まれで今年35歳になります。出身地は神奈川県秦野市です。

【塚本】先生の治療院はどちらにありますか。

【秋間】神奈川県横浜市都筑区で開業させていただきました。

【塚本】出身校は?

【秋間】神奈川衛生学園専門学校です。

【塚本】もともと理学療法士になろうとしていたと以前オンラインでお聞きしましたが、あん摩マッサージ指圧師(あマ指師)の学校に入学したのはなぜですか。

【秋間】理学療法士になろうとしていたのはスポーツ系、アスリート系のトレーナーになりたいと思っていたからです。でも、自分自身が「腰椎のヘルニア」で歩けないくらいになり、トイレに行くにも這っていくような状態になりました。そんな状態のときにある人から「治療院に行ってみたら」との提案があり、治療院で鍼灸やマッサージの治療を受けてだいぶ回復しました。その後にリハビリを受けましたが、治療で痛みが取れることでとても助かり、印象に残りました。こんなことがあり鍼灸、マッサージの資格を取ろうと専門学校に入学しました。また、専門学校の学生だったときに父を膵臓がんで亡くしました。自分が健康関係を目指しているのに父の膵臓がんに気づかなかったこと、救えなかったことがとても悔やまれました。そのことから自分の死生観が変わり不遜な言い方ですが、死が近い高齢者やその家族に治療を通してお手伝いができればいいと思い、訪問マッサージ業を選びました。

【塚本】理学療法と訪問マッサージの違いについてどう思っていますか。

【秋間】介護保険と医療保険という違いはあります。個人的な意見ですが理学療法士は歩かせること、病院から自宅に戻すなど何か一つの目標に向かって携わります。あマ指師の訪問マッサージは患者さんの日常生活を有意義に送らせるために治療部位を丁寧に扱い、患者さんに寄り添うことができるものだと思っています。

【塚本】秋間治療院を開業したのはいつですか。また、最近は開業時にフランチャイズに加盟する人が多いですが、先生はしなかったと聞いていますがなぜでしょうか。

【秋間】秋間治療院を開業したのは2018年8月です。フランチャイズに加盟しなかったのは自分で開業できると思ったからです。自分でできるのにフランチャイズに加盟しての事業はもったいない気がしました。加盟しなければ自分で売上げたものは全部自分のものです(笑)。

【塚本】理学療法は短期・中期ですが、訪問マッサージは長期の治療になるケースが多いですよね。

【秋間】訪問マッサージは慢性の病気が多く、難病の方や寝たきりの人が多いのでどうしても長期になります。

【塚本】開業して売上げは順調に上がりましたか。

【秋間】売上げは中長期的に見ていましたし、すぐに急に上がるものだと思っていませんでした。自分がやっている治療などをしっかりやれていればおのずと患者さんの紹介が出ると考えていました。個人の意見ですが、営業に関しては他店の人がすでにたくさんケアマネージャーに営業に訪れていて、ケアマネージャーは同じようなことを何回も聞かされ聞き飽きていると思いました。じゃ、ケアマネージャーと仲のいい人は誰かと考えたとき訪問看護師だと気づきました。前職で訪問看護リハビリステーションにいたので訪問看護師の知り合いに連絡を取りました。その訪問看護師さんがケアマネージャーを紹介してくれました。

【塚本】つても何もない状態で開業した場合は営業活動が必要だと思いますか。

【秋間】僕は地域医療をコンセプトにやりたいと思っているので、開業している近隣のケアマネージャーにご挨拶に行くでしょうね。でもケアマネージャーは訪問マッサージの営業は何度も聞いているでしょうから、他店と違う内容で自分の治療院の強みだけを伝えると思います。僕はやらされる営業よりも自分からやりたいと思う営業をしたいです。

【塚本】売上比率で施設と個人宅ではどの程度ですか。新型コロナの影響はありますか。

【秋間】施設が6割、個人宅が4割程度ですね。施設が多いのは複数の患者さんの施術では往療料は1人分しか取れませんが、同じ建物なので移動効率がいいですし、1人のケアマネージャーでその施設の患者さん全員についての話ができていいです。往療料の減少分は自費治療を別の日にやって補っています。売上げ的には自費治療よりも保険治療の方が多いです。
新型コロナの影響ですが、僕の場合は逆に患者さんが増えました。コロナのおかげで外出ができなくて筋力低下が起きたり、転倒した患者さんが寝たきりになるのはイヤだと患者さんの家族やケアマネージャーの希望で、感染症対策を十分にした上で施術をさせていただいています。僕は機能訓練もしていたので紹介してくれたんだと思っています。

【塚本】秋間治療院は施術者が1人なので施術者が大勢いる治療院と比べて感染リスクが少ないと考えられたかもしれませんね。ただ、施術内容が満足いかなければ切られているので維持、継続できたのは秋間先生のお力ですね。開院後治療院を開いて嬉しかったことは何ですか。

【秋間】新型コロナの感染が始まっていろいろな業種に影響を与えたのでとても不安でした。今までやってきたことを変えずに一つひとつやることをしっかりやっていこうと思って実行した結果が、今、1人でも事業継続できています。これは嬉しいことです。患者さんに関しては91歳の患者さんが半年程度で車椅子の状態から杖で歩けるようになったことです。

【塚本】訪問マッサージの施術者に必要な要素は何でしょうか。

【秋間】一番はコミュニケーション力ですね。施術技術については同じ施術の繰り返しではなく、患者さんの状態は今日と明日の状態が違うのでどんな状況にも対応できるような勉強をすることが必要です。

【塚本】将来はどのような治療院にしたいですか。

【秋間】今は横浜市でやっていますが今の地域に貢献できたら、地方に行ってそのノウハウを伝えたいです。訪問マッサージ以外に健康な人が健康を維持・増進する予防治療をやりたいです。

【塚本】今年をどんな年にしたいですか。

【秋間】自分自身の技術向上はもちろん、先ほども言いましたように地域にどう貢献できるかを考えながら、その地方の訪問マッサージ、訪問看護や介護系の皆さんとしっかり連携が取れる人脈を作る年にしたいと思っています。

【塚本】ありがとうございました。

◇ ◇

塚本洋介の独り言
病院のカンファレンス(会議・協議)に訪問マッサージの施術者が呼ばれないことは私がずっと抱えている疑問です。訪問マッサージはリハビリとは違うし訪問看護や訪問介護とも違うのになぜメンバーに入っていないのでしょうか。訪問マッサージを支援する私の立場からすると病院とのパイプをもっと強くして、地域の「退院カンファレンス」に呼ばれるような治療院が増えることを今年の目標にして行きたいと考えています。

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