特集 新春特別企画 訪問マッサージの現状 「フランチャイズを考える」

NPO法人日本手技療法協会 佐藤 吉隆
近年は訪問マッサージ事業を「フランチャイズ(FC)」に加盟してスタートするケースが目立っています。私が20年以上続けている「訪問マッサージ研修」は訪問マッサージ事業を始めたい人向けに開催しています。始めたきっかけはマッサージ養成校に訪問マッサージのための授業がないからです。
この事業を始めるためには私が研修で教授する「自分の力」で開業する方法と「FCに加盟」して開業する方法があります。最近は「自分の力」と「FC加盟」の開業で迷うのではなくFCの中のどこの会社に加盟するか迷う人が多いといわれています。この特集では、訪問マッサージに新規参入を考えているあん摩マッサージ指圧(あマ指師)やあマ指師を雇用して開業する予定の方、すでに開業している先生のために訪問マッサージの現状とフランチャイズの実情を紹介します。

療養費と訪問マッサージ

訪問マッサージは筋麻痺や関節拘縮などの症状の改善・緩和を目的としたマッサージを在宅で受けられるサービスです。あマ指師の国家資格を持つ施術者が公的医療保険を適用して行います。保険適用のためには医師からの同意があることを証明する同意書などが必要です。また、訪問をする患者の状態は歩行困難か不可能であることも条件です。施術費は、頭の先から尾頭までの体幹(1部位)、左右の上肢(2部位)、左右の下肢(2部位)と分けられ医師の同意書に基づいて最大5部位まで支給されます。支給される金額は1部位350円です。
訪問マッサージは、施術費以外に施術者が患者宅(患家)まで行く距離によって往療料を請求加算します。距離が4キロまでは2300円、4キロを越えると2550円(16キロまで)を施術費に加算します。
例えば、それぞれ2キロ未満の距離で4部位の患者の家を1日10人回ったとすると、訪問マッサージの売上げは1カ月(週休2日で月20日計算)74万円となります。店舗治療院が訪問と同じように保険適用で1日10人マッサージ施術を行った場合は、往療料がないため1カ月(20日計算)28万円の収入です。これでは店舗の家賃・光熱費などの経費だけで赤字になります。そのため店舗治療院では保険適用の施術はほとんど行われていません。

※請求できる療養費は施術費、往療料以外にも温罨法、温罨法と電気光線の併施、施術報告書交付料などで加算されますが、金額も大きくないためこれらの金額は省略します。


グラフ2 マッサージに係る療養費の推移(推計)

グラフ1と2から分るように高齢者は増え続けマッサージ療養費が右肩上がりになっています。このことから訪問マッサージは市場も豊かで、売上げも高く魅力的に見えます。訪問マッサージ業は主として要介護者、高齢者のための事業であり社会貢献性の高いものです。要介護者が多い地域に住んでいたり身内に要介護者がいたりする一般の人が、あマ指を雇用して開業することも多く、そのほとんどはFC加盟をすると聞きます。
現実はどうでしょうか。マッサージ療養費は2000(平成12)年から2015(平成27)年までの14年間で約7倍に右肩上がりで来ました。しかし、グラフ2から分かるように2016(平成28)年の対前年比は1・0%、2018年は0・8%と横ばいになっています。

FCは、加盟料が100~500万円、ほかにロイヤリティーという名目でその月の療養費請求の手数料として10%~25%を支払うようになっているようです。
訪問マッサージ業界を知らずに、FCには訪問マッサージ院経営ノウハウがある、加盟後も責任を持って経営指導してくれる、宣伝力があり集患や採用が簡単と考え、銀行などから多額の融資を受けて加盟する人がいます。しかし、加盟後に営業先への患者獲得方法や医師からの同意書取得の方法など療養費の請求までは教えてくれますが、加盟者に変わって営業をしてくれるところはありません。すべて自分の作業になります。
訪問マッサージの営業は患者へ直接行うのではなく、ほとんど場合介護施設のスタッフなどを対象に行われます。これらの介護スタッフなどを回り、健康保険が適用される訪問マッサージの必要な患者の紹介をしてもらうことが営業です。あくまでも紹介ですから、新参の見ず知らずの治療院に紹介してくれる介護スタッフはほとんどいません。何度も通いさまざまなマッサージの効用や治療院の方針などを話し、治療院と施術内容に納得していただいて初めて紹介してくれるのです。

※詳細やFCの元加盟者の声は、ひーりんぐマガジン74号新春特集2をご覧ください。

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