新型コロナワクチン
新型コロナワクチンの接種は2020年12月上旬の英国を皮切りに、世界87の国と地域で始まっている。日本でも今年2月17日、国が主導して全国100カ所の国立病院機構などの職員を対象とした先行接種を開始した。3月以降の先行接種者以外の医療従事者から以降は全て自治体が主体となる。 接種ワクチンには米国のファイザーとモデルナがメッセンジャーRNA(mRNA)タイプ、英国アストラゼネカと米国のジョンソン&ジョンソン、ロシアのスプートニクVのウイルスベクタータイプ、中国の2社シノバック、シノファームの不活化タイプなどがある。 日本政府はアメリカのファイザーとモデルナ、それにイギリスのアストラゼネカの製薬会社3社との間で、供給契約を交わしている。ファイザーとは今年中に1.4億回分のワクチン供給契約を結んでおり、すでに日本で薬事承認を受け接種を開始している。しかし、日本への輸入・輸送が順調に進んでいないため日本到着数が読めないという。現在日本で薬事承認申請中のモデルナのアストラゼネカワクチンは日本国内の製造拠点から8000万回分以上を供給する見通しだが、欧州で3月に接種後血栓ができる事例が複数報告され接種を一時見合わせている国もある。
新型コロナワクチン接種意識調査
ワクチン接種は強制ではなく努力義務とされた。 4月12日から高齢者の接種が一部自治体で始まった。接種効果に期待がかかるが、一方で接種をためらう人もいる。 2月12日付の時事通信の発信記事に関西大の土田昭司教授(社会安全学)が昨年12月、18都道府県の20~60代男女2500人を対象に行ったワクチン接種への意識調査の結果がある。 それによると接種を希望したのは47.2%にとどまり、23.7%が接種を望んでいない。「接種したい、どちらかといえば接種したい」が5割を割り込み、「接種したくない、どちらかといえば接種したくない」が2割強となっている。
「接種したくない、どちらかといえば接種したくない」が2割を超えている背景について土田教授は、「自分は感染しない」という思い込みや、副反応への恐怖があると指摘。「人は元来、危険に敏感。安全情報より危険が目につくのは自然の流れだ」と理解を示す一方、「正確な情報を基に重症化と副反応をてんびんに掛け冷静に判断してほしい」と求めている。政府には、「副反応の確率や、起きてもほとんどが問題ないという海外の事例などを丁寧に示してほしい」と要望。
日本国内では過去の薬害や副反応に対する扇情的な報道などの影響でワクチンに対する懐疑的な感情が根強いことから、普及が他の先進国に大きく後れを取るとの見方が広がっている。北里大学の中山哲夫特任教授(ウイルス学)は「潜在的に国民の頭の中にワクチンには副反応があるということがこびりついている」と指摘する。昨年9月に英医学誌『ランセット』に掲載されたワクチンへの信頼度に関する意識調査では、調査を実施した149カ国のうち、日本が最も低い国の一つであることが明らかになっている。 自分のため、家族のため、高齢者のため、医療従事者のために新型コロナワクチン接種の普及実現に政府やメディアが積極的な役割を果たすことが求められる。
※詳細は、ひーりんぐマガジン71号(春号)をご覧ください。