特集 THE DATA 厚労省「平成30年衛生行政報告例」から読み解く未来

接骨院数の増加と療養費収入の低下が続く
厚生労働省が9月4日に「平成30年衛生行政報告例(就業医療関係者)結果の概況」を公表した。
報告例には年報と隔年報がある。隔年報には2年ごとに公表され、
保健師、看護師、歯科衛生士などとともに「あはき師」「柔道整復師」の国家資格者の就業数や施術所数などが集計され記載されている。
これらの数値は、その年の年末時点の保健所の各種届出書から導き出した数である。
国家資格は持っているが就業していない人はカウントされておらず現実に即している。
今回は隔年報の統計の中から柔道整復師を中心に過去と現状を見て未来を読み解いてみよう。

就業国家資格者数の年次推移
単位: 人
調査日: 各年末

資格種別 2008年
(H20)
2010年
(H22)
2012年
(H24)
2014年
(H26)
2016年
(H28)
2018年
(H30)
あん摩
マッサージ
指圧師
101,913 104,663 109,309 113,215 116,280 118,916
はり師 86,208 92,421 100,881 108,537 116,007 121,757
きゅう師 84,629 90,664 99,118 106,642 114,048 119,796
柔道整復師 43,946 50,428 58,573 63,873 68,120 73,017

※2010年は東日本大震災の影響により、宮城県が含まれていない。

 

あマ指師、はり師、きゅう師、柔道整復師全てで増加
あん摩マッサージ指圧師(あマ指師)は2018年(平成30)年の末で11万8916人と08年からの10年間で約1万7000人増加した。はり師、きゅう師もともに10年間で約3万5000人の増加。柔道整復師(柔整師)は18年の就業者数は7万3017人で、7万人を突破した。 柔整師は10年間で約2万9000人増加したが、08年からの2年間で約6500人、10年からの2年間で約8100人と増え続けてきたものの、12年以降は増加の伸び率が縮まった。特に14年~16年、16年~18年の増加人数は、5000人台を連続して割り込んだ。

国家資格者の施術所数の年次推移
単位: カ所
調査日: 各年末

施術所種別 2008年
(H20)
2010年
(H22)
2012年
(H24)
2014年
(H26)
2016年
(H28)
2018年
(H30)
あん摩
マッサージ指圧
21,092 19,983 19,880 19,271 19,618 19,389
はり、きゅう 19,451 21,065 23,145 25,445 28,299 30,450
あマ指、はり、きゅう 35,808 36,251 37,185 37,682 37,780 38,170
柔道整復
の施術所
34,839 37,997 42,431 45,572 48,024 50,077

※2010年は東日本大震災の影響により、宮城県が含まれていない。

接骨院数は10年間で最低の伸び
2018(平成30)年末の「あん摩マッサージ指圧を行う施術所数」は、10年間では1703カ所減少している。「はり、きゅうを行う施術所数」は18年12月末日で3万0450カ所あり、この10年間は増加傾向にある。 「柔整師の施術所、接骨院数」は18年12月末で5万0077カ所と初めて5万カ所を超えた。10年間で約1万5000カ所増加した。この10年間を見ると接骨院の増加数の伸び率は12年をピークとして減少傾向にあり、増加は上げ止まり傾向を見せている。とはいえ、このままの状態で推移すると4年後には接骨院がコンビニエンスストアの店舗数と肩を並べる可能性がある。

接骨院1院当たりの柔整師数
単位: 人
調査日: 各年末

柔整師数 2008年
(H20)
2010年
(H22)
2012年
(H24)
2014年
(H26)
2016年
(H28)
2018年
(H30)
1院あたり 1.26 1.33 1.38 1.40 1.42 1.46

※2010年は東日本大震災の影響により、宮城県が含まれていない。

 

1院当たりの柔道整復師数は増加傾向

接骨院では柔整師不足を嘆く声が聞かれる。しかし12年以降は柔整師の増加の伸び率が縮まっているにもかかわらず、施術所は増えているので新規の雇用は難しい傾向が続くものと考えられる。今年国家資格を取得した約4000人全員が接骨院に就職したとしても、全国の接骨院数を考えると新国家資格者を雇用できるのは10院に1人にも満たない。 養成校関係者が話すように、給与もそれなりで賞与もあり社会保険等を完備している大手接骨院に入所する新卒就業希望者が増加している。さらに介護施設で機能訓練指導員としての新たな道へ進む柔整師も多い。個人規模の接骨院は新たなスタッフを雇用したくても雇用できず、複数の柔整師を抱える大手チェーン接骨院のスタッフ数は増え続ける。将来ますます大規模接骨院に集約される可能性が考えられる。

現在の業界は生き残りをかけたサバイバルの真只中だが、
厚労省が審議会などで示す行動では柔整師、あはき師の国家資格を将来的にも残すように動いている。
サバイバルの中で、
淘汰されず生き残った後は今よりずっと安定した業界になっているものと考えられる。
そこまで生き残るすべを追求する必要がある。
※記事の詳細は、ひーりんぐマガジン65号(秋号)をご覧ください。

 

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