●上肢の関節リラクゼーション療法
1)肩甲帯
(症状) 大胸筋が萎縮し肩甲挙筋が伸展、肩甲骨が外転した状態にあり肩甲挙筋が内転した状態で関節拘縮を起こしている。
(目的) 大胸筋と肩甲挙筋を動かすことにより肩関節の可動域を広げる。
(療法) 両手を三角筋代わりのように肩関節(大胸筋停止部と肩甲挙筋の停止部)を包み込むように固定し、大胸筋と肩甲挙筋を前後に揺すりながら屈伸運動を行うことで肩関節可動域を広げてゆきます。
2)肩関節
(症状) 三角筋または大円筋が萎縮を起こしている。
(目的) 三角筋と大円筋を動かすことにより可動域の拡大を図る。
(療法) 片手を三角筋代わりに肩関節を包み込むように固定し、肩関節に上腕骨の骨頭を押し込みながら肘関節部を上下運動させます。
3)肘関節
(症状) 上腕二頭筋が萎縮して起きている。
(目的) この筋萎縮の改善を行うことによって可動域の拡大を図る。
(療法) 上腕二頭筋がまっすぐになるように手掌を上向きにし、片方の手で手首を持ち(手首と肘関節の中間でも良い)、肩関節がずれないよう固定し、上腕二頭筋の起始部に刺激を与えるために、もう片方の手で烏口突起部を軽く押さえます。この烏口突起部にかけた手は動かさず、肘の角度を変えることなく前腕の内旋、外旋を行います。つまり肩関節のねじり運動を他動的に行います。
次に、上腕二頭筋停止部の筋萎縮に対する改善方法として、上腕二頭筋がまっすぐになるように手掌を上に向け、片方の手で手首を持ち肘関節を固定し、上腕二頭筋の停止部に刺激を与えるために、肘関節を下から包み込むように持ち、親指で肘関節中程よりやや手首寄りを軽く押さえます。この肘関節部にかけた手は動かさず、手首で回内、回外を繰り返し行います。
また、このとき肘関節の角度を開くようにしながら行います。
4)手関節
(症状) 前腕屈筋群が萎縮し手関節が拘縮を呈している。
(目的) 屈筋群の筋萎縮を改善する。
(療法) 屈筋群がまっすぐになるように手掌を上向きにし、手首から手掌にかけて両四指を手背側に両拇指を当て、はさみこむようにようにしながら両栂指に軽く力を加え、同時に動く範囲で手掌の屈曲を行い、伸展の場合は両栂指、両四指を屈曲の時と逆に入れ変えて行います。
また、写真のように手背側から包み込むように屈曲を行っても結構です。いずれの場合も、屈曲のほうを強めに行なうと筋肉が緩みやすくなります。
5)手の指関節
(症状) 指の屈筋群が萎縮して指関節が拘縮を起こしている。
(目的) 屈筋群の萎縮改善を図る。
(療法) 手掌を上向きにし、一方の手は小指側から四指の屈曲関節内側に入れ込み拇指を握りこみながら、四指の関節部を開くように伸展させます。手が入らない場合は示指より一本ずつ包み込むようにしながら伸展させます。