「ここまでなら請求できる」 はもう通用しない 【前編】

はじめは千葉県の関東信越厚生局千葉事務所からの指導でした。指導を受けたら多少証拠があると言うことで、監査を受けました。ここで、大きな団体に所属していれば県の保険部の人と団体の役員が立会いの下で集団指導ということになったのでしょうが、S氏は個人請求でした。
審査ははじめ抜き打ちで行われます。電話等で聞いてきてそこで引っかかると、郵便で問い合わせが来ます。それが著しくたまってくると個別指導の対象となります。

レセプトが1000枚以上もあると槍玉にあがります。そのうち300枚くらいが国保でした。「国保はそれほど厳しくないが、社会保険が厳しかった」(S氏)。
分院も1日150人くらいの患者が来ていましたが「そっちもやられた」のだそうです。
「患者には、電気、手技をする前にローリングなど行い、3工程あったので待ち時間はあまり感じなかったはず。3工程やって触る時間が少なくても患者は納得し、満足して繰り返し来る結果250人の患者が来るのだから患者からのクレームはないはずだ」こう高をくくっていたS氏でした。

監査では初検料の計上だとか同じ部位での逓減の問題など調査されました。
しかも90%が長期だったのです。その結果、差額を返還請求され、その額は積もり積もって数千万円になってしまいました。さらにあとから、行政処分として療養費の取り扱い1年停止が来ました。
「努力して技術を磨いて、診療の工夫をして患者を増やしたつもりだったが、すべて水の泡となってしまった」。

一般的には、開業して5年以内に指導を受けます。ただ東京のような都市部ではどんどん新規開業が増えていくので、どうしても目立つところから行われます。

S氏は請求団体についても次のように話しています。

「請求団体等にしても、ただ来たレセプトをチェックして右から左へと出すのではなく、逓減のところ間違っていないか、記入漏れはないか、近接部位は大丈夫なかなど、突っ込まれる前に請求団体内部で十分な審査を行った上で提出してくれたり、保険者からの問い合わせに関しても理論武装しているところがよいだろう。」

◇   ◇   ◇

近年、保険者からの再審査請求が増加しているといいます。各県とも、保険者からの再審査請求が増加傾向にあり、その対応には保険者自身が苦慮しているということです。

柔整師の療養の給付に係る審査については、従前から審査委員会の改善が要望されています。厚生省(現厚労省)からも、柔整師審査会の改善を図ろうと平成11年10月20日付で「医師及び柔道整復師に係る療養費制度に精通した者」を学識経験者として参加させ、審査は厳重に行い、不正が発覚した場合の罰則や指導、監査も盛り込んだ通知が都道府県知事宛送達されました。
医師会などからは整形外科医の参加が要望されています。

(不正請求の実態2 (後編)へつづく)

1 2
よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!