次に、訪問施術に際する行動面について感じたことを述べたいと思います。 門扉、玄関扉、部屋のドア等の開閉についてです。 歌手の千昌夫は岩手県から出てきて遠藤実先生の所へ弟子入りし、歌手になるための勉強を始めるのですが、いつまでたってもレッスンをして貰えず、そうこうするうちに一年が過ぎ去ろうとしているある日、 「お前はいつまで経っても扉の開閉が乱暴だ」 と叱られたそうです。 以後開閉時には音を立てないように気をつけるように努め始めたら、レッスンを始めてくれたという話を聞いた事があります。 チャイムを押し、身分を伝え、開錠、扉を開けて患者宅に入る際、当然扉を閉めますが、そばにいる私でもびっくりするような大きな音を立てて閉める人がおります。 「おはようございます」 「こんにちは」 「失礼します」 「お大事に」 挨拶の言葉が掻き消えるほどの大きな音を立てて扉を閉めては、せっかくの挨拶言葉もどこへやら、相手に届くのは不快感と音に対する驚きだけです。 このように音を立てて閉める人は後ろ手に扉を閉める人に多く見受けられます。 いついかなる時も、扉の開閉は扉に向いて閉めることを心掛けたいものです。
次に、挨拶について感じたことをお話しましょう。 研修の先生にとって初めて訪問する患者さん宅ですから緊張して当たり前ですが、挨拶する時の声が大変小さいということです。蚊の鳴くような声で、そばにいる私でも聞き逃してしまう程度の小さな声での挨拶です。 せめて目の前にいる方に聞こえる程度の声で結構ですから、大きな声で挨拶をしましょう。 その時、お辞儀は頭をちょこんと下げるだけの先生がほとんどです。 頭を下げることはありません、腰を曲げましょう。腰を曲げればおのずと頭も下がります。 俺は治療家だと反り返っても始まりません。 ゆっくりと腰を折り一呼吸おいてゆっくりと姿勢を正せば、深々と挨拶したように見えます。 いよいよ玄関に入りました。靴を脱いで上がるのですが,皆さんはどのように靴を脱ぎ、その靴を玄関の上がり框 (かまち) の、どの辺に置きますか。 脱ぎ散らかしたまま部屋に入る人、上がり框の中央に向きを変えて置く人、脱ぐ時は框の中央で脱ぎ、どちらかの端に向きを変えて置く人など様々です。 先生方はどこに置きますか。ご自分で考えてみてください。 (次のページへ)