設問1:この数年内で売上げ向上のために何か取り組みをしましたか。
この設問ではこの数年内に売上げを増やすための行動を起こしたかどうか聞いた。結果 は売上げ向上のための取り組みを実施した施術所が94.9%と圧倒的に多かった。実施し なかったのは5.1%と少なく、これから実施しようとしている所はなかった。療養費の 厳格化だけではなく、新型コロナ感染症の影響から来所を控える人が増加したことも売上 げ低下を招き、何らかの売上げ対策が行われたものと考えられる。
「実施していない5.1%」に当たる、取り組みを実施しなかった施術所には設問5でその理由を聞いている。回答は
①十分な売り上げがある:0所
②時間がない:0所
③面倒くさい:3所
その他の答えとしては「宣伝しても来ませんよ!」というものがあった。
設問2:実施した院にお尋ねします。取り組み内容はどのようなことでしたか?
この設問では取り組み内容を聞いた。集計結果は図2の通りだが具体的な取り組み内容 として、「自律神経レーザー治療の導入」「元々あった自費施術メニュー価格の適正化」 「ホームページの作成」「トレーナー活動」「訪問施術」などがあった。また、「サービ スで行っていたウォーターベッドなどを有料に切り替え売上げUPした」との回答があっ た。身近なところでは「経費削減(電気代の削減のため、不必要な機器用のブレーカーを 切る、帰宅時は電源を切る。消耗品を見直し価格の安い消耗品に切り替えたり節約をする)」。 その他の26.9%には「企業と契約して社員の健康相談・体調管理のアドバイス事業を 行った」「施術とは全く違う別事業を開始した」などがあった。売上げ低下による意外な 副産物として「患者・客の減少によりスタッフにかかる負担が軽減した」というのがあった。
設問3:実施した院にお尋ねします。取り組み内容をどのように宣伝しましたか?
この設問では取り組み内容の宣伝方法を聞いた。図はないが、ホームページ、チラシ、店内ポスターで約7割になっている。その他の3.9%にはDMや年賀状、暑中見舞いの書状での宣伝が多かった。数は少ないが地域で講座活動や展示会などでの宣伝というのも見られた。
設問4:実施した院にお尋ねします。売上げ向上などの実施効果は見られましたか?
売上げ向上のための取り組みで実施効果はあったかと聞いたところ、84.3%が効果あ ったと回答した。効果がなかった所、実施前と変わらなかった所の合計は11.8%だった。 「自費移行により収益は上がったもののコロナ禍により患者数が減少し、経営的には満足 できていない状況」との声も聞かれた。
設問5:実施していない院にお尋ねします。実施しない理由をお聞かせください。
(設問1参照)
設問6:今後の売上げ向上対策としてどのような対策が良いと感じていますか?
設問6では今後の対策としてどのようなものが良いか聞いてみた。27.2%を占めるその他の、主だったものを挙げると「メニュー単価を上げる」「自費の患者をもっと増やす努力をする」「現存の患者からの紹介を増やす」などがあった。中には「実態調査されるような業界が良いわけない! あきらめている!」という悲観的な回答や「保険者には強い姿勢で接する。医師会や厚労省の意見をうのみにして弱い者いじめをしているだけの彼らに仕事を奪われる一方であることを自覚すべき」というのもあった。
設問7:今後の売上げ向上対策として自費新規メニューの導入には何が良いと思いますか?
この設問では自費新規メニューの導入に適しているものは何かを聞いた。手技・治療系が46.6%、美容・痩身系が34.2%、機器系12.3%と続いた。
設問8:自費メニュー導入のための新たなメニュー等はどこで修得するのが良いと思いますか?
修得先がセミナーという人が57.1%と圧倒的に多く、友人・知人17.1%、その他24.4%、学校4.3%と続いた。その他の中には「自院の患者さんのニーズに合わせて自社開発する」「YouTubeから院で実践できそうな内容をピックアップしてセミナーなどでそれを修得する」「習得済みの手技の技術力の向上」「接骨院の自費メニューって・・・物販以外ないでしょ?」という回答もあった。
設問9:記載以外に売上が向上できる方法や向上した結果があればお聞かせください。
手技療法家にとって売上が上がる具体策を聞いてみた。「口コミの強化」「値上げと時短が必要になる。それを来院者に納得してもらうには? を考えること」「今はどこの企業も価格の値上げを行っているのでメニューごとに100円程度であれば値上げがしやすい」「交通事故・労災患者の獲得」「企業や弁護士と契約して製品開発」「スタッフのやる気を引き上げる福利厚生を取り入れる」「資格の勉強」。
設問10:この先の治療院・施術所経営はどうなると思いますか?
業界の将来をどう見ているのか聞いてみた。「より厳しくなる」と思うが66.1%、現状維持が5.1%、その他28.8%だった。その他の中では「保険治療は厳しくなり年金が減り物価は上がる。そして患者は来なくなるという悪循環に入っている」「1998年までの柔整養成所は14校で1学年定員1050名という規制が外れ今は100以上養成校があることが問題」と嘆く声がある一方で、「やり方次第でどうとでもなる」「その人の考え方次第」という回答もあった。
まとめ
施術所の増加、療養費の支給低下、新型コロナウイルス感染症による患者・客の治療控えが続いている。
売り上げが低下して新たな取り組みを行う際も俯瞰的ではなく狭い施術所内での治療という視点からしか見られない人が多いと聞く。一方で、新型コロナウイルス感染症を逆手に取り出歩かなくなった患者・客の運動のフォローで大きく売り上げを伸ばした施術所があった。視点を業界に近い介護、福祉、フィットネスなどとの共通点やその延長線上から俯瞰して新たな施策を考えることも良いかもしれない。物販については「物売りは治療家としてのプライドが許さない」という頑なな施術家がいるが、物販を新規事業として捉え成功するにはどうしたら良いかを考える柔軟性が必要かもしれない。また、新規患者の開拓が難しければ今いる患者・客が半年、1年と施術所に通い続ける仕組み、何らかの形でお金を落としてくれる仕組みも有望のようだ。「予防型施術所」というビジネスモデルを築き大きな成功を収めているところもあるようだ。売り上げが低下するこの時期は内向きにならず、患者・客そして社会に不足している点を幅広い視点から見つけ、果敢にアタックする必要がある。何を行うにしても発送の転換が肝である。
※グラフの構成比は小数点以下第2位を四捨五入しているため、合計しても必ずしも100%とはならない
※設問によっては重複回答のため合計数が総院数にならない