以前こんな事件がありました。
無資格のマッサージ師を全国の健康ランドやホテルに派遣していたなどとして、神奈川県警生活経済課と厚木署は、あん摩マッサージ指圧師・はり師・きゅう師等に関する法律違反の疑いで、東京都新宿区のマッサージ師派遣会社「エーワン」の会長と社長(会長の実弟)の両容疑者を逮捕しました。
同課の調べでは、両容疑者は、横浜市瀬谷区の健康センター内に、県知事に無届けでマッサージ施術所を開設し、6月15日~7月26日の間、無資格のマッサージ師4人を使い13回にわたり、同区内の美容師女性ら9人にマッサージを行わせたということです。
4人のうち中国人男女2人がすでに逮捕されていました。
当時同社所属のマッサージ師は700人いましたが、そのうち522人は無資格だったとも伝えられています。
同社は1981年に設立され、首都圏を中心に全国の都府県の健康ランドなどに施術所を開設し、ホテルなどへの派遣も行っており、業界最大手でした。鈴木会長は取調べの中で「うちはボディーケアで、マッサージではない」と容疑を否認したそうです。
この事件は、大きく新聞でも取り上げられ業界に波紋を投げかけたものです。
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ご存じのように、あん摩、マッサージ、指圧、はり、灸の免許を取得するには3年以上の専門教育を受け、国家試験に合格しなければなりません。免許がなくてもこれらの行為ができるのは医師だけです。
また、同じ国家試験でも、たとえば「柔道整復師」の資格を持っていても「あん摩マッサージ指圧師」の資格を持っていない限り「マッサージ」をするのは禁じられています。これは別の資格になるからです。それを破れば、30万円以下の罰金に処せられます。
近年オフィス街や温浴施設などを中心に「リラクゼーション」「足つぼマッサージ」などの簡易マッサージ専門店が急増していますが、これらは国家資格免許を持たない施術者が多いことから、この事件は行政に対して取り締まりを強化されるきっかけとなったと見られています。
しかし、こうした簡易マッサージが医療行為に当たるのかどうか、明確な線引きはなく、実質はマッサージでも、はっきり『マッサージ』と掲げない限り難しいところです。
実際保健所が指導に出向いても『これはマッサージではない』と言われれば、どうしようもないというのが、実態だったようです。
最高裁は1960年に、禁止処罰には『人の健康に害を及ぼす恐れがあることの認定が必要』との見解を示しており、保健所などでは『無免許での施術だけでは取り締まれない』というのが実情でした。
けれどもこの事件では、県警の照会に対し厚生労働省はマッサージの定義を『体重をかけ、対象者が痛みを感じる強さで行う行為』と回答。これを受け県警は「エーワン」摘発に踏み切ったわけです。
いわゆる言葉だけで、「マッサージ」ではないといっても実際の施術内容で判断される場合が出てきということです。