昨今、インターネットなど技術環境の変化により、個人情報保護に対する重要性がますます増してきています。ちょっとしたミスなどで、個人情報があっという間に世界中に広がる危険性をはらんでいるからです。
特に、患者を扱う治療院などは個人情報流出に対して人ごとではなく、非常に敏感にならざるを得ない状況です。
このような状況もあり、NPO法人日本手技療法協会は、NPO法人認証記念として夏、日本教育会館で「第1回Pマーク(プライバシーマーク)取得のための無料セミナー」を開催しました。セミナーには、あはき、柔整、他治療院などの院長や従事者ら併せて約150人が参加、満員でのセミナー開講となりました。
前半は経済産業省商務情報政策局情報経済課の太田克良・個人情報保護係長による基調講演「個人情報保護法とPマーク」、後半は「Pマーク取得の実際と効用」と題しPマーク取得の最前線にいる日本規格総合研究所主任コンサルタント・小谷宏氏が講演を行いました。
最後には、質疑応答が行われましたが、個人情報に熱心な先生が多く質問が相次いだため、終了時間を予定より40分間延長するなど、関心の高さがうかがえました。
● 基調講演「個人情報保護法とPマーク」
<経済産業省商務情報政策局情報経済課個人情報保護係長 太田克良氏>
太田氏はまず、個人情報保護法の考え方として保護と利用のバランスをどのようにとっているか、また実行性担保の仕組みについて言及し、さらには個人情報保護法施行後の漏洩の主な原因として、
「書類の紛失」
「書類の盗難」
「PCの盗難」
を挙げて、この上位3要因が全体の72%にも及ぶことや対処法について説明されました。
次に個人情報保護法で用いられる基本的な用語について、
「個人情報」とは、第一に「生存する個人に関する情報である」
とされ、当該情報に含まれる氏名、生年月日その他の記述などにより、特定の個人を識別することができる情報と定義づけられました。これは、他の情報と容易に照らし合わせて、それにより特定の個人を識別することのできる情報も含みます。
● 「Pマーク取得の実際と効用」
<日本規格総合研究所主任コンサルタント 小谷宏氏>
小谷氏は、技術環境の変化が個人情報保護を必要としてきたことを述べ、個人情報保護法施行前の個人情報流出と施行後の流出の具体例を交えて紹介されました。
「個人情報の流出にともなう損失」では自主対応だがお詫び料として一人当たり500~1000円を支払っている企業があることや、損害賠償請求では宇治市が一人1万5000円、TBCが一人約100万円で係争中であることに加え、社会的損失として「顧客離れ」「売上げの減少」「イメージ・ブランドの失墜」を招くことに言及されました。
次に小谷氏は、プライバシーマーク制度の概要について述べられました。
個人情報を収集する際のポイントとしては、問診票等には収集目的などを記載した上で、患者や顧客に対して受付時や利用開始時に同意を得ていくことだとし、情報の管理法としては、問診票、カルテなどの施錠管理や、個人情報管理場所への入室管理の徹底、パソコン(電子ファイル保護)の安全管理の必要性を説かれました。