整形外科に送った患者が戻らないのは「技術に不安を感じるから」
山口院長は祖父と母が柔整師で、祖父の故・本部正雄氏は東京柔整専門学校の校長も務めた。そのため、柔整などに対して頭ごなしに否定するのではなく、どこがいけないのか、医師と鍼灸、柔整など両方の立場から、冷静な見方をしてもらえる医師だ。
「柔整師側の技術や考え方の水準に個人差がありすぎるんです。かなり勉強している柔整師はメールのやりとりをしただけでもすぐにわかります。レベルの低い人が多いために、優秀な柔整師までそれと一括りに見られてしまう。そして、低いレベルの柔整師までもが先生と呼ばれていることにも憤りを感じる」。
山口院長は言う。
「近くの接骨院からの紹介で当院へ来院された骨折患者さんに、ギブスをした上で1週間後に再度来院するようにと指示した。その間の1週間は接骨院に通っていたそうだが、そこで何をしていたのか患者さんに話を聞くと、ギブスの上から電極をあてていた――。どう聞いても笑い話にしか聞こえない、そんな例もありました。もしこれが、再診料をとるためにやったのなら悪質ですがそうでないならただのアホです」また、「指に痛みを訴えている患者さんを診ていた接骨院から『治らないから診てほしい』と1週間目に紹介されてきた。外見上もレントゲン上も骨折しているので、紹介元の接骨院でどういう治療をしていたのかと患者さんに聞くと、初日からいきなりマッサージされたと……。さらに伸筋腱も断裂していたため、マッサージすることで逆効果となり、腱が退縮してしまって手術をしなければ治らない状態になってしまった」などなど、たくさんの事例が出てくる。
山口院長は、現在地に開業する際、近隣の医院をまわり開業のあいさつをしたという。各医院で対応はまちまちだったが、新規開業時に、あいさつ回りをしておくとその後の敷居も少しは低くなるかもしれない。仮に院長に会えなかったとしても最初に訪問しておくと精神的にも随分と違うものである。気をつけなければいけないのは、突然訪問するのではなく、事前のアポイントメントは必ず必要である、ということだ。
医師として柔整師側に求めることといえば、「せめて、病名などの専門用語くらいは最低限覚えてほしい」と。「病気や怪我、検査、治療法などに関する引き出しがあまりにも少ない柔整師が多々存在する。これでは話にならないし、同じ土俵に立つ気にならない。一度、死に物狂いで寸暇を惜しんで勉強してみると、治療観変わりますよ」……。
詳細は、ひーりんぐマガジン29号(秋号)をご覧下さい。