民主党医療政策には「統合医療の確立ならびに推進」として、「漢方、健康補助食品やハーブ療法、食餌療法、あんま・マッサージ・指圧、鍼灸、柔道整復、音楽療法といった相補・代替医療について、予防の観点から、統合医療として科学的根拠を確立します。アジアの東玄関という地理的要件を活かし、日本の特色ある医療を推進するため、専門的な医療従事者の養成を図るとともに、調査・研究の機関の設置を検討します」と記されている。こうした方向性は、すでに昨年春ころから、民主党内に「統合医療を普及・促進する議員の会」が設立され、ここでさまざまな議論が行われている。この会には、(1)健康補助食品 (2)針灸 (3)マッサージ(あんま) (4)柔道整復師 (5)カイロプラクティック (6)温泉療法 (7)漢方医療 (8)心理療法 (9)芸術・音楽療法――などの分野別小委員が設けられ中間報告も行われている。
柔道整復――柔道整復師法の見直しなど指摘
柔道整復師小委員会では、昨年12月に中間報告を行った。各団体からのヒアリング、意見交換などを経て、今後の課題について次のようにまとめ、さらに議論していくことを確認している。
柔道整復師法の(改正)見直しについて、「柔道整復師法の一部が今の時代に合致していない」として次の点を挙げている。
(1) 傷病名追加の問題
現在柔道整復師の治療範囲は、昭和45(1970)年の「柔道整復師法」の成立における趣旨説明が基になっている。その結果、時代の推移とともにいくつかの「傷病」が現在柔道整復師の治療範囲に事実上追加となっている現実がある。
(2) 柔道整復師治療にX線検査の導入について
骨折等の治療において、外科手術ではなく徒手整復で回復できるのなら、人はそれに越したことはない。徒手整復をより完全に近づけるためには、X線検査は必要不可欠と言わざるを得ない。
(3) 17条の「医師の同意」の問題
治療の継続性を考えるなら、応急処置以後も引き続き治療が行えることが必要。そのために「応急処置以後」の治療における「医師の同意」の見直しの検討。
さらに、柔整専門学校の急増問題について、一番恐れていることは、過当競争の結果として起きる柔道整復師医療の粗製乱造であり、濃厚過剰診療になってしまうこと」だとしている。その他「生活保護受給者の接骨院の利用における不都合性」などについて挙げている。
鍼灸――国際的評価に比べ国内では低い鍼灸
鍼灸小委員会では昨年夏、業界各団体からの報告と問題提起を基に“はり・きゅうをめぐる現状と課題”などについて次のように中間報告を行っている。
● 競争の激化
有資格者養成数の増加や無資格者による圧迫。一般の消費者は有資格か無資格かを認識していないため、安価に養成されるマッサージ業者が有資格者を圧迫、外科的傷害等のトラブルも発生している。業界は無資格者取締の強化、資格認定証の店頭掲示義務付けを要望。
● 医療保険における取扱い
医師による承認が不可欠で保険扱いが進まない。
● 認知度・評価度の低さ
利用経験者は国民の数%にとどまるが、一方でWHOは鍼灸の適応症状を公表し、国際的な評価の方が高いという声もある。保険適用外ということが利用を阻害するという見解もある。
● 適応についての検証
鍼灸、漢方等の東洋医学全般につき、統合医療、補完医療として、有効性について研究が進められている。日本においては慢性疾患以外に効果を認めようという意向は小さい。
マッサージ(あんま)――「医師の同意書」が利用抑制に
マッサージ(あんま)小委員会の中間報告では、無免許者の取り締まり問題について、(1)あはき法第12条についての昭和35年最高裁判決での「健康に害を及ぼさなければ法12条違反にはならない」との主旨が、いまだに「健康に害を及ぼさなければ無免許でも問題ない」と誤解され、無免許営業が横行している。 (2)無免許営業については、仙台高裁への差し戻し審において「施術には作用があり、作用があるから効果がある。効果のある施術を無資格で行えば、有害の恐れがある」との鑑定により有罪判決が出され、上告棄却により有罪が確定している。 (3)したがって、無免許営業は違法であり、取り締まりは可能であるが、現状では政府による十分な取り締まりは行われていない――などとしている。
カイロプラクティック――質向上のための法的規制を
カイロプラクティック小委員会では、日本の現状について、施術者は現在2万~2万5000人いるが、国際基準教育修了者が約600人で、2万人以上の施術者は、医業類似行為免許取得者、届出医業類似行為資格者、カイロプラクティック短期養成校出身者、講習会等受講修了者。平成3(1991)年の「三浦レポート」においてその効果を認めないと断定されたことにより、カイロ業界は決定的な打撃を被り、深刻な影響を受けている。職業としてのカイロプラクターは認められているが、カイロプラクティックの質と安全性向上のための教育機関を認めず、法的規制や認知がないことにより、有効性を期待する国民の安心感を損ねていることが指摘されている。(1)WHOガイドラインの国内基準化 (2)カイロプラクター養成の充実 (3)三浦レポートの再検討――が挙げられている。
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民主党医療政策には、これまでの小泉改革路線のような、市場原理主義を医療に導入して医療費を押さえ込むという手法から、医療従事者の拡充や予防、さらには統合医療の確立など医療を根本から考え直した上で、医療費を節約していこうとの観点が見えてくる。今後の治療院業界の担う役割は大きい。
※詳しくは10月25日発行のひーりんぐマガジン25号(秋号)をご覧下さい。