当協会顧問社会保険労務士 岡 久氏に聞く
助成金には経済産業省(中小企業庁)の助成金や厚生労働省の助成金、内閣府の助成金などがあり、様々あるが、施術院が深く関る助成金は、一般的に厚生労働省所管で取扱っている支援金が多い。
この厚生労働省で取扱っている支援金は、条件さえ満たせばどんな会社でも貰うことができ、返済する必要はない。
例えば、60歳以上の従業員(1年以上雇用)がいて定年延長(継続雇用)すると「中小企業定年引上げ等奨励金」が最高160万円受給できる。視覚障害者を雇用し訪問マッサージの事業をおこした際に、助成金を利用して経営基盤の安定をはかり、地域社会にも貢献している治療院の例もある。
ただ、助成金が実際に入金されるのは平均で申請から2~3カ月後。さらに毎年のように改正箇所があり、気付いたときにはもう廃止されていたなどということもよくある。これらは専門家である社会保険労務士などによく相談した上で申請するのが賢い方法だろう。
税理士と社労士との違い
当協会顧問社会保険労務士 岡 久氏は「税理士がお金に関する相談事を扱うのに対し、社労士は人に関するあらゆる相談受け付けます」「社会保険労務士(社労士)の業務は大きく分けて3つで、社会保険や労働保険に関する手続き、事業主の代理行為、コンサルティング業務です」。 例えば、複数の店舗を持つような規模の施術院であれば、人材確保、助成金、給与計算、保険手続き、労災手続きなどで幅広くお世話になっていると思われるが、小規模な施術院では、社労士には縁がないと思っている院長が数多く見受けられる。しかし、弁護士に依頼するほどでもない労使のトラブルや、今回のメインテーマである助成金など、社労士と知り合いなっておくとメリットになるケースは多い。「労使のトラブルに関してよくあるのは、被雇用者が顧客を持って独立するケースですね。そうしたことを未然に防ぐための相談、またはこじれる一歩手前の当事者同士の話し合いの段階で、我々がお手伝いするケースはけっこうあります」(岡氏)。
こうした問題については、就業規則の服務規律及びそれに関する懲罰として規定したり、実際の損害の賠償請求を規定し、抑制力を高めるなどの方法があるという。また、そうした独立を抑止する方法以外に、逆に独立する際のルールなどを定め、前向きにフランチャイズや社内ベンチャーのように発展させていこうという考え方もアドバイスしたり、そのためのマニュアル作りをお手伝いしたりすることもあるそうだ。
上手な見つけ方、付き合い方
助成金に関しては、種類も金額もかなり充実してきており、また助成金の使途も制限がないので、利用しない手はない。現在、雇用に関する助成金は100種類以上あり、厚生労働省関係(ハローワーク)のものだけでも約50種類はある。
そこで頼りになるのが「社労士さん」だ。「新たにお付き合いする場合は、紹介が多いですね。例えば助成金について院長さんが税理士さんに相談し、そこから社労士に、というようなケースです」(岡氏)。社労士の仕事は幅広いため、専門や得意分野があるケースも多く、同じ士業の人に具体的に相談を持ちかけるのはいい方法だろう。
それでは具体的に仕事を依頼するときは、どのくらい費用がかかるのだろうか。「うちの場合ですと、相談料などはNPO法人日本手技療法協会の会員さんは無料にさせていただいています。着手金は日当ベースで考えます。書類のボリュームは提出先によってかなり違いますので、だいたい2万円から5万円くらいですね。成功報酬は助成金の額によって5~20%といったところです」(岡氏)。
施術院が利用しやすい助成金
それでは施術院が利用できそうな助成金をいくつか紹介してみよう。助成金には、大きく分けて、二つある。 ひとつは、人を雇い入れる場合の助成金(厚生労働省/ハローワークが実施)であり、もうひとつは、雇用のための職場環境を改良するための助成金(高齢・障害者雇用支援機構、21世紀職業財団が実施)である。基本的には、労働保険(労災、雇用保険)に加入している事業主(法人、個人問わず)である事や、ハローワーク経由での求人が条件となる。また障害者だけでなく、高齢者、ニート、母子家庭の母、会社が倒産した人など、対象はさまざま。金額も対象者により変わる。雇用の前に、どういう人を雇えば助成金の対象になるのかをチェックしておく必要がありそうだ。
特に障害者雇用について岡氏は「平成21(2009)年2月6日以降の特例により、ハローワークの助成金として、例えば、障害等級2級以上の人を10人雇い入れたら、『特例子会社等設立促進助成金』として2000万円出る。これは2年目、3年目も年間1000万円出る大きな助成金だが、あまり知られていないですね」。他にもハローワークには「特定求職者雇用開発助成金」として、身体・知的障害者の雇用により90万円から240万円が支給されるもの、「障害者雇用ファーストステップ奨励金」として、はじめて障害者を雇用した企業に1回限りだが100万円出るものもある。
障害者以外の雇用助成金としては、25歳から40歳の過去1年以上雇用保険未加入の人を雇い入れた場合、中小企業であれば100万円が支給される奨励金もある。これは障害者は対象外で、年長フリーターや就職内定を取り消された学生のための新しい制度だ。いずれにしても、正社員としての雇用で最低賃金をクリアしていれば、3回くらいに分けて支給される仕組みだ。
スタッフの求人の際3ヶ月の試用期間についても、トライアル雇用奨励金として毎月一定金額を雇用主が受け取る制度などがある。
※ 障害者を対象とする雇用関係の助成金で一部雇用保険料ではなく障害者納付金制度から財源を賄っている助成金がある
バリアフリー化やパソコン購入にも
職場環境を整えるための助成金もある。例えば雇用する人の障害の種別により、パソコンを購入した、自動ドアにした、バリアフリーにした、休憩室を設けたといったようなケースも、一部補助金の対象となる可能性がある。ただし注意したいのは、ハローワークの助成金は基本的に事前に申請する必要があるということだ。雇用であれば雇用後の申請は認められない。逆に高齢・障害者雇用支援機構の助成金は一般に雇ってからの申請となる。
労働保険に関しては保険料が給与総額の1000分の11(平成21年8月現在)と安い。
この労働保険は、厚生年金、健康保険などに入っていなくても、青色申告の施術院でも加入ができる。
給与が月額20万円、賞与年間2ヶ月のスタッフでは本人負担額が約800円(月額)、施術院(雇用側)の保険料はおよそ2000円(月額)となる。この金額でハローワークでの求人、万一の労災事故における給付が可能となり、その上、様々な助成金の申請もできるので、未加入の施術院は加入した方がメリットが多いと考えられる。
なお、加入に関する問い合せや手続きも社会保険労務士岡さんは依頼を受けている。いずれにしても、人の雇用、設備の改善を考えるなら、その前に社労士に相談してみる価値はありそうだ。
「依頼をいただいたら費用はいただきますが、それまでは日本手技療法協会の会員は無料です。社労士の仕事の範囲内ならばどんなことでも気楽に相談して欲しいですね」(岡氏)。
※助成金は平成21年8月現在時点。その後は変更される可能性がある。
※NPO法人日本手技療法協会の会員は、当協会に連絡をいただければ岡氏の相談料などは無料。基本的に全国の治療院からの依頼を受けることができる。
申込先 : NPO法人日本手技療法協会
本ホームページのお問い合わせフォームからか
電話03-5296-9055 FAX03-52969056でご連絡いただければ折り返し、当協会顧問社会保険労務士岡氏が連絡を差し上げます。
※ 都合により折り返しの連絡は、数日後になることがあります