開業の心構えから市場調査まで【後編】

次に人を引き寄せるイベント性の高いモノと自院の位置関係を確認します。
ここでいうところのイベント性の高いモノとは、駅・デパート・スーパー等であり、その順位は開業候補地の個々の特性により異なります。

豊かな商圏を構成する最も大きな要素は 「人」 ですが、その人の流れや住民の動線は、何らかの理由があって発生します。それが例えば駅であり、スーパーマーケット等なのです。だからといって、これらのイベント性の高いものの側で開業すれば必ずしも成功するとは限りません。自院がこの流れの中に位置することが重要なのです。

人の流れや住民動線というと、大げさな調査のように聞こえますが、実際には、2~3日、のご自分の足で歩いて過ごしてみれば自然と見えてくるものです。

また、詳細な調査を実施したい場合には、同一時間帯に異なった場所で一定時間、通行人数を数えてみるといいでしょう。この通行量調査により 「人通りが多い。」 という結果を得ても、さらに人の流れのスピードにも注目する必要があります。大抵の場合、通勤途中の人や役所へ行く人等、ある明確な目的を持った通行人の移動スピードは比較的速いもので、素通りされることが多いものです。

もちろん、通勤途中に自院を認知してもらうと言う意味では大いに結構ですが、ゆっくりとした移動スピードの人々が多いに越したことはありません。

マイナス要素がまったく存在しない開業候補地を探すことは、困難というよりは不可能であると思いますが、やはり、 「マイナス要素は少なければ少ないほど成功する確率は高くなる。」 と断言できます。
これからの治療院は、小売業や飲食店の出店ノウハウ等を取り入れる必要がある時代となったと思います。特に飲食業界のノウハウは、その道のプロたちが日夜しのぎを削る、正に弱肉強食の世界で 「生き残るための知恵」 であり、その 「生き残るための知恵」 を導入することは、大きなプラス要因となります。

例えば、飲食業界でも、前述の通り、人通りが多いということだけではなく、人の流れのスピードにまで注目します。飲食店の場合、 “速い人の流れ″の中では商売は成り立ちません。それを知っていますから、このような立地は敬遠し、比較的ゆったりとした人通りのある場所に、積極的にオープンしているのです。

飲食店や小売店の成功のポイントの一つに、 「毎分50メートル以下の移動スピード」 というものがあります。これ以上のスピードで移動している人は、お客になり難いのだそうです。

◇   ◇   ◇

吉村 龍夫 氏
[ひーりんぐマガジン 1号より]

1 2 3
よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!