開業の心構えから市場調査まで【前編】

● 支給基準に則った療養費を
 「かつては医療を補佐すべく医療過疎地域で内科医などと連携し、だれもやらない運動器疾患の保存的治療をいってに引き受け、地域で尊敬され活躍してこられた柔道整復師が多くおられた。
勿論柔道の有段者であり、警察官として苦労された方が多い。その労に報いるために与えられた受領委任払いである。

又、臨床X線技師の資格を取り立派な撮影装置をもっておられ、責任 ”診断″ を行っていた方々も少なくない。基本的に影の業界でしかも汁が非常に甘いので14程度の学校にとどめ、縁故と金による入学しか認めなかった業界であり、それでちょうど維持できていた業界である。

それが今や昨年1100人、今年2100人の卒業資格取得制の段階で大都市の各町内に、いや、通りという通りに争って接骨院が開業し始めている。三年後には五千人である。
(中略)
2万人を支えてきた受領委任払いという砂上の楼閣に、毎年数千人の新しい柔道整復師が群がったらどうなるか。崩れるであろう。」

これは近畿大学整形外科教授 浜西千秋先生が 「からだサイエンス」 50号に寄稿された文章の抜粋です。

誠に鋭い目で柔道整復師の歴史を看破されていました。正に脱帽するほか無い慧眼であります。また浜西先生は寄稿文中で柔整業界と柔道整復師の今後について心から憂いておられましたことを加えておきます。

◇   ◇   ◇

過去において 「接骨院黄金時代」 が存在しました。正に浜西先生がご指摘される 「基本的に影の業界でしかも汁が非常に甘いので14程度の学校にとどめ」 た時代のことです。

この時代の療養費報酬による収入は現在とは比較できないくらいに高額であり、接骨院は 「経営」 するものではなく 「運営」 するものでありました。

当時の接骨院には現在のように 「自らの営利追求活動である経営」 は必要とされておらず、 「組織や機能などを動かし、うまく機能させる運営」 で十分であったのです。

過去、一部の接骨院では、慢性的な肩こりの患者に対しても、 「布団につまづいて転倒、負傷せり」 などの理由をこじつけ、”肩関節打撲″”足関節捻挫″など負傷部位と施術内容を改ざんして保険請求を行っていたといいます。

また、実際の通院日数よりも多く通院したことにして、請求金額を水増ししたりもしていました。これらはまさに、浜西先生がご指摘されるところの「柔道有段者であり、苦労された方に報いるために与えられた受領委任払い」なる特別扱いの範疇であったのかも知れません。

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