現金の記帳と管理【会計教室1】

● 窓口未収金の取扱
保険にしろ、自費にしろ本来治療した日に全額現金でもらうのが原則ですが、たまに今手持現金がないからと一部未収になる場合があります。この場合は窓口に別途未収管理用のノートを用意し、入金があったら消しこみをします。日計表には一部未収が生じた人の行に未収額をカッコつきで記入しておきます。決算に際して未収残高がある場合はこれを収入として計上しなければならないので注意してください。

● 担当者別作業
これまでの話を担当者別にすると、受付担当者は営業時間の前に日計表の当日用を用意し窓口現金の繰越残高を前日の日計表を見て記入し、これが実際の現金と一致していることを確認します。治療者より治療代を現金で預かり日計表に記入します。窓口現金の出納があればこれを日計表に記入します。一日の営業が終了したら日計表の集計をして帳簿上の窓口現金残高をだします。レジを使用している場合は一日分のレジシートを出力し日計表の窓口現金収入合計と一致していることを確かめます。
事業主あるいは責任者は営業時間の前に日計表の繰越残と実際の現金残の一致を確認します。営業時間中に窓口現金の一部を抜き取りします。営業時間終了後実際の現金残高にこの抜き取った現金を加算して日計表の現金残高に一致していることを確かめます。日計表については窓口現金収入とレジシートの一致の確認、現金領収書控えと日計表の一致の確認、諸経費については対応する領収書とのチェックを行ないます。翌日の釣銭不足はないか確認します。窓口現金残高が多くなってきた場合は夜間金庫に預け入れするか翌日銀行に集金に来てもらうか預け入れします。補足ですが最近の治安の悪化により店舗に現金を置いていると盗難にあう場合があります。店舗総合損害保険に加入していると現金の盗難についても一定限度まで保険でカバーされますのでまだ未加入の方は加入をお奨めします。

● 税務調査
これまで述べてきた窓口現金の記帳、管理は何のために行なうのでしょうか。一つは既に述べたように現金に絡む従業員の不正がおきないようにするためです。しかし従業員がいない治療院で妻が受付、経理を行なっている場合は従業員の不正がおきるわけはありません。おきるのは納税に対しての不正行為です。例えば、治療院の不正でよくあるのは自費収入の計上をごまかすことです。保険治療は保険請求を行なうため明細が明らかになっており保険請求の明細と日計表とを突合せれば窓口収入をごまかしたことはすぐにわかってしまうので不正はしにくいものです。
一方自費収入については治療院では対応する仕入がないためこれをちょろまかしてレジ入力をしないで日計表に計上しなくても後でなかなかわからないものです。税務署はこれを見破るため受付簿と日計表を突合せ受付簿に記入があるが日計表に記入がない人を抜き出します。また現金の領収書控えの人が日計表に記載があるか金額は一致しているかチェックします。また被治療者の人別治療記録を日計表と突合せ日計表に載っていない人がいないか調査します、個人の銀行口座をみて入金先が不明の入金について内容を調査されます。貸し金庫がある場合はその中身を見に行きます。税務署に不信感を持たれないようにするにはこれまで述べた日々の窓口現金の記帳、管理をしっかり行ない関連書類との整合性を保持しておくことが大切です

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上田 曽太郎 氏 :上田公認会計士事務所長
[ひーりんぐマガジン 4号より]

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