離職理由の多くは、体力的な問題。女性には不利な、長時間勤務
そもそも接骨院、整骨院で働こうとする女性の多くは、男性社会に入る覚悟を決めています。ある程度の不便は承知の上、改善できることは改善するし、無理なことは無理と割り切っているようです。
しかしながら、接骨院、整骨院に勤務した女性が1~2年でその職を離れてしまうことは、少なくありません。その主な理由は、体力的な問題。手技療法それぞれで違いはあるでしょうが、施術自体にそれほどの体力が必要だとは思えません。
しかし、大抵の治療院は、朝9時ころから夜8時、9時と、営業時間が長い傾向があります。その中で何人もの患者さんを診るとなるとそれは重労働となりますし、生理痛などで体調を崩しているときにはさらに辛くなります。営業後も事務処理や研修などを考えると、拘束時間の長さはかなりのものとなります。
退職後、整形外科に再就職した人がいると聞きましたが、その理由は労働時間が短いから。治療家が体調を崩していては仕事になりません。「そんなひ弱なスタッフは要らない」と思われる経営者もいるかもしれませんが、そもそも「女性スタッフを」とのニーズは女性患者からのものです。患者の痛みがわかってこそ、適切な治療を施せるというものですし、体調不良の相談にのるというのも最近では大切な治療の一環とされています。
女性が職場に入ることによる影響と変化を好転させる手腕
さらに、人間関係がうまく行かずに退職するという場合、その理由は意外にも、女性同士の軋轢であることが多いそうです。まるでサラリーマン社会のようですが、女性部下同士の対立を解決する仕事が、院長に求められる日がやってくるかもしれません。
また水面下では、院長や男性スタッフによるセクシャルハラスメントが行われているとも聞きます。男性一色の世界で長く仕事をしてきたためか、女性に対する配慮に欠け、嫌な思いをさせてしまうこともあるようです。
柔道整復師による女性患者へのわいせつ事件が浮上することもありますが、前述のBさんは、それについてこう話しました。
「事件として表に出ているのは、よっぽど酷い例でしょうが、多かれ少なかれ、似たようなことが起こっていても不思議ではないと思います。若くてきれいな女性患者は、なぜかいつも院長が診ているなんてことはよくありますから。せっかく女性スタッフを雇っているんだから、女性患者は私たちに担当させるべきだと思うこともあります。技術的な問題もあるでしょうから、一概には言えませんけれど…」
この件については実際のところよく分かりませんが、働く場に女性の目があるということは、色々なところに影響を及ぼします。「部下に気を遣うなんて面倒だ」と思われる方も少なくないでしょうが、前述のような「わいせつ事件」の防止にもつながるかもしれませんし、患者への気遣いがさらに及んでリピーターが増えるかもしれません。ある整骨院に通う患者がこう言いました。
「女性の新人スタッフが入ってから、トイレが綺麗になりましたね。もともと清潔ではあったんだけれど、エアークリーナーとかハンドソープとかが備えられるようになって、親切だなあって思いましたよ」
最近では、女性柔整師を新規オープン治療院の院長に抜擢し、経営の幅を広げている例もみられます。これは好例ですが、女性なら誰でもいいというわけではありません。資格、能力、そして個性のある人材を上手く起用するのが経営者の仕事です。「やる気のある有能な女性スタッフを伸ばす」というのは、これからの経営戦略に適した形といえるでしょう。そのためにも、彼女たちの職場環境を整える工夫が必要になってくるのではないでしょうか。