バックグラウンドが多様化する柔道整復師
女性の進出は、治療院を活性化する要素に!?
近年、柔道整復師国家試験合格者数が飛躍的に伸びていますが、その構成も年々多様化する傾向にあるようです。
柔道をはじめとしたスポーツ経験者が多かったこの業界にも、大学で経営学を専攻していた起業指向の人やサラリーマンからの転職者、リラクゼーション店でアルバイトをしていた若い女性や、さらには子育てがひと段落した主婦など、さまざまなバックグラウンドを持つ人が入ってくるようになりました。
専門学校が増えて広告宣伝が浸透し、国家資格であり将来は保険取扱いという形で開業することも出来る柔整師に、注目が集まるようになったのかもしれません。
そのようななかでも、この業界に大きな変化を及ぼしたのは、女性の進出でしょう。専門学校の履修科目の中に柔道が含まれるため、これまでは、鍼師、きゅう師、マッサージ師に比べると、女性が柔整師の資格を目指すことは稀でした。
しかし近年、柔整専門学校のホームページなどには、「柔道の授業は人間の骨格や筋肉を知るために行うものです。女性は女性同士で組むという配慮もします」というような説明が書かれていたりします。「それなら」とチャレンジする女性は出てくるでしょうし、「先輩がいるのなら」とそれに続く女性はさらに増えていくでしょう。これから女性柔道整復師は、増えることこそあれ、減ることはなさそうな情勢です。
国家試験に合格後、新人女性柔整師たちも、男性に混じって求職活動を行います。男性色の強いこの業界へ飛び込もうとする彼女たちの、不安や期待は、同じ立場の男性柔整師たちよりも一層強いものです。
一方、接骨院・整骨院での、活躍の場を求める女性たちの受け入れ態勢は、万全なのでしょうか。柔道整復師によるわいせつ事件なども報道されるなかで、患者からのリクエストには「女の先生を」という声もあるようです。「女性柔整師のいる治療院」というのは十分なアピールになるのです。
接骨院、整骨院で女性が働くということはどういうことなのか、実際に勤務している方に伺ってみました。
男性一色の職場に飛び込んだ女性の、最初の不便はユニフォームと更衣室
柔整師の職に就いて6年目になるAさんは、
「私は、今所属している接骨院の女性柔整師第1号として就職したんですけど、はじめは、貸与された制服がほかの男性スタッフと同じものだったんですね。サイズは合わないし、クリーニングはしていたはずなんですけれど汗臭いしで、イヤだなって思った覚えがあります。まもなく、女性用の白衣を院長が買ってくれたのですが、ホッとしましたね(笑)」
と当時を振り返りました。
このようにユニフォームはとても基本的な問題といえます。
また、マッサージ師として整骨院で働くBさんは、
「私は整骨院のオープンからスタッフとして働いていました。私のほかに女性は、柔道整復師を目指す学生がもう一人いましたが、院長が、女性の白衣はどれがいいかと相談を持ちかけてくれました。上司が無頓着だと、男性の小さいサイズを女性に貸与するということもあると聞きましたが、ボタンは左前だし体のラインが違うので、肩や腰周りがだぶついて働きにくいですよね。あくまでも噂ですが、女性スタッフにピンクの白衣を着せたら患者が増えたなんて話もありますが、そんな気を回す必要はありません(苦笑)」
と教えてくれました。
自由診療のリラクゼーション店勤務の経験を持つBさんは、客からの嫌がらせを受けたことがあるといいます。体に直接触れる職業なだけに、そのようなトラブルは稀ではないようですが、その点では保険証の提出を求める接骨院・整骨院では問題ないと付け加えてくれました。
また整骨院、接骨院に勤めるこの2人の女性が共通して話したのは、更衣室について。“欲をいえば”という前置きをつけながらも、その切望振りはあきらかでした。
最初の頃は、就業と同時に男性スタッフたちが、自分(女性)がいるにもかかわらず着替えを始めるということもあり、戸惑ったという経験談も話してくれました。