開業の心構えから市場調査まで【前編】

治療家として、治療によって収入を得て生活を立てたい。独立して開業したい。
しかしながら昨今では、治療家として最も重点を置かなければならない本業をないがしろにして開業している接骨院、鍼灸院等の治療院が数多く見受けられます。これは大問題です。
● 治療家とは “治療の職人”
 治療家として、治療によって収入を得て生活を立てたい。柔道整復師であっても、鍼灸師、マッサージ師や整体師であっても、独立して開業したい。大いに結構なことであると思います。

しかしながら昨今では、治療家として最も重点を置かなければならない本業をないがしろにして開業している接骨院、鍼灸院等の治療院が数多く見受けられます。これは大問題です。

例えば、いきなり揉み始める柔整師、骨折の患者を断る柔整師、電療機材による電療しかしない柔整師、開業はしてみたけれどレセプトを作成できない柔整師、医療助成の存在を知らない柔整師、問診が取れない鍼灸師、セクハラで訴えられる治療家等々数え上げればきりがありません。

はっきり申し上げて、これらの先生方には「治療院」を開業する資格はありません。専門学校を卒業して国家試験に合格すれば、確かにその国家資格は取得できます。

しかし、国家資格というものは、国家によって規定された業務を行うための許可であり、すぐに開業するためものではありません。国家試験というものの性質上、その合否の判定はあくまで学問上の知識が中心とならざるを得ません。

しかし、実際の治療院運営はそれ以外に実に多くのものが要求されます。昨今では、国家資格さえ取得すれば開業できる。開業できれば後は何とかなる、といった考え方で、専門学校卒業後にいきなり開業する先生方が実に多くなってしまいました。

柔整師にしても、鍼灸あん摩マッサージ師にしても、症状の確定から施術、そして完治までのプロセスを、西洋医学による科学的なデータにより検証しながら行うことは困難であるために、施術者の勘と経験に基づいて判断することが大前提とならざるを得ません。

手技療法には「職人の技」が要求されているのです。つまり、治療家とは?治療の職人″なのです。職人は、伝承された技や知識を度重なる経験によって身につけるしかありません。書物や机上では習得できないのです。
そのうえ、身体に関する技術職ですから、作り直しのきく木彫りや陶芸職人とは異なり、失敗は許されない訳です。そのためには、治療の現場での修業、いわゆるOn The Job Training (=OJT)研修が最も重要であり効果的であることは言うまでもありません。

この研修によりそれぞれの本業、例えば柔道整復師であるならば、「骨折、脱臼、打撲、軟部組織に対する整復、固定、後療」。鍼灸師であるならば、「患者を診て、経穴を選択し、疾患に対応する。」と言う基本を身に付けることが、治療家として開業前に習得しなければならない最重要事項であり、この仕事のコア(核)となるものです。

まず、これができて、更に患者との接し方(患者に対する心の持ち方)から周辺業務の処理方法(例えばレセプトの作成法等々々…)までを体得して初めて、開業への道を歩むべきであると思います。

つまり、柔整師ならば接骨院として、また鍼灸師ならば鍼灸院としてそれぞれの本業を確立した後で、必要であるならば関連技術の導入、分院展開、慰安系メニューの導入等による業務の拡張を目指すことが本道であると思います。

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